穏やかに晩年を共に仲良くゆっくりと過ごしていくはずだった夫婦。ある日突然、妻に認知症の兆候が現れる。めぐり逢い、伴侶と決め、ふたりだけの言葉をもつまでになっていたはずの妻が、ゆっくりと確実にこわれていく。夫はそれを受け入れ、見守ることしか出来ない。そして、夫も病に倒れる。夫婦はついに決意を固め、特別養護老人ホームと病院に入り別々の暮らしを始めるが、やがてその日がやってくる・・・。
芸術選奨文部大臣賞、読売文学賞に輝いた耕治人の同名小説を、「父と子」('83)の保坂延彦監督が映画化。情け容赦なく老いが迫るなかで、肩を寄せ合いながらたくましく生きる老夫婦。その壮絶ながらも温かな日常をハートウォーミングに映し出す。