パリのオルセー美術館が開館２０周年事業として立ち上げた映画プロジェクト。
その第一回作品の監督に指名されたホウ・シャオシェンは、数あるテーマから『赤い風船』とアルベール・ラモリス監督へのオマージュを捧げることを選んだ。ホウ・シャオシェンが紡ぎだす瑞々しい世界は、単なるアニバーサリー・フィルムの枠を越え、名作から新たな名作が生まれることを証明するにふさわしいこととなった。彼の穏やかで温かい眼差しで描く世界は、わたしたちに安らぎに満ちた至福の時間を味わわせてくれる。
映画学校に中国人留学生ソンは、人形劇師スザンヌの息子シモンのベビーシッターを始める。新作劇の準備や住宅問題、夫との不和で神経過敏になっていたスザンヌの生活は、ソンとシモンの存在により徐々に変化していく。そんな彼らをやさしく見守るように赤い風船がパリの町を浮遊している。